家計簿アプリを比較する記事はいくらでもあります。ただ、そのほとんどが料金と社名が古いままです。
この1〜2年でこのジャンルには3つの大きな地殻変動が起きました。「完全無料・口座連携無制限」を掲げていたおかねのコンパスは、2024年6月30日にサービスを終了しています。 マネーフォワード MEは2025年8月に値上げしました。そしてB/43は「ワンバンク」に名前が変わっています。
そこでこの記事では、各社の公式料金ページ・公式ヘルプ・公式リリースで1件ずつ確認できた数字だけを並べます。確認できなかったものは「確認できなかった」と正直に書きます。
3行でわかる2026年7月の結論
- 無料で全部やる時代は終わった。 各社が無料枠に連携数・更新頻度・閲覧期間の制限をかけ、有料前提の構造になった
- 同じプランでも、申し込む場所で値段が違う。 アプリから課金するとストア手数料が上乗せされる。Web申込のほうが安い
- 「AI搭載」の中身はサービスによって別物。 レシートOCRなのか、自動仕分けなのか、生成AIなのかを見分ける必要がある
① そもそも「AI家計簿」のAIとは何なのか
各社が謳う「AI」は、技術的には3つの階層に分かれます。ここを混同したまま選ぶと期待外れになります。
| 階層 | 中身 | できること |
|---|---|---|
| 自動仕分け | 明細のテキストからカテゴリを推定する分類処理 | 「セブン-イレブン」→「食費」の振り分け |
| レシートOCR | 画像から文字・数字を読み取る画像認識 | 撮影したレシートの品目・金額の取り込み |
| 生成AI(LLM) | 収支データを自然言語で要約・助言 | 「今月なぜ赤字か」への回答、対話での検索 |
重要なのは、「AI家計簿」を名乗るサービスの多くで、実際に動いているのは下の2階層だけという点です。生成AIによる家計相談は、上位プランの差別化機能として段階的に入りつつある段階で、今回調べた範囲ではどのサービスも搭載しているLLMのモデル名を公式には明記していません。
「AIが家計を分析してアドバイスしてくれる」という期待で選ぶなら、その機能が無料枠に入っているのか、そもそも実装されているのかを個別に確認する必要があります。
② マネーフォワード ME:2025年8月に値上げ、無料は4件まで
国内で最も連携先が多い定番です。ただし無料枠の狭さは正確に知っておく必要があります。
公式のお知らせによると、プレミアムサービス スタンダードコースの料金は2025年8月5日に改定されました。
| 決済方法 | 月額 | 年額 |
|---|---|---|
| クレジットカード決済(Web) | 540円 | 5,940円 |
| App Store決済・Google Play決済 | 590円 | 6,490円 |
同じプランなのに、アプリから課金すると年間550円高くなります。 これはストア手数料が価格に反映されているためで、後述するとおり他社でも同じ構造です。
なお資産形成アドバンスコースはこの改定の対象外である旨が公式に明記されています。また、クレジットカード決済の年額プランについては、改定後料金の適用日が2025年9月5日となる旨も併せて案内されています。
無料版の制約:無料会員が連携できる金融関連サービスは最大4件までです。銀行1つ、クレカ2枚、証券1つでもう埋まります。
向いている人:証券・FX・暗号資産まで含めた総資産を1画面で追いたい人。 向かない人:連携先が5件以上あって、かつ月額を払いたくない人。この場合、無料枠での実用性はほぼありません。
③ Zaim:無料でも連携数に上限がない
無料枠の設計がマネーフォワード MEと正反対です。Zaimは無料会員でも口座の連携数に上限がありません。 代わりに、更新のタイミングやデータの見え方に制限がかかります。
公式のプレミアム紹介ページで確認できた料金は次のとおりです。
| プラン | Web申込 | アプリ申込 |
|---|---|---|
| 年プラン | 4,378円(月換算365円) | 4,800円(月換算400円) |
| 月プラン | 440円 | 480円 |
| 無料お試し | 30日間 | 7日間 |
公式サイトにも「Web 申込みならアプリより最大 422 円(年間)安い」と明記されています。無料お試し期間もWebなら30日、アプリからだと7日と4倍以上の差があります。 アプリ内の導線に従って課金すると、高いほうかつ短いほうを選ばされることになります。
有料化で解けるのは主に次の4点です。
- 銀行・カード連携の更新を好きなタイミングでできる(無料版は任意更新に制限あり)
- レシート撮影が高精度版になり、商品名・品目・金額の自動判別の修正作業が減る
- 将来の資産グラフ・収支年表を作るライフプラン機能
- 各口座の残高推移が無料は1か月のところ全期間見られる
もう1つ、無料会員には注意点があります。公式の注記に、無料会員登録の場合は90日以上ログインがないとデータ取得が一時的に停止される旨が書かれています(プレミアム会員はログインの有無にかかわらず継続取得)。放置すると自動収集が止まる設計です。
④ Moneytree:無料でも広告なし・50社まで
「とにかく静かに口座を一覧したい」人向けの選択肢です。公式のプランと料金ページによれば、無料版でも広告非表示、かつ50社まで金融サービスを登録できます。 個人利用ならこれで足りてしまう人は多いはずです。
有料の「Moneytree Grow」の料金は次のとおりです。
| 決済方法 | 月額 | 年額 |
|---|---|---|
| Web決済 | 390円 | 3,900円(月換算325円) |
| アプリ決済 | 430円 | 4,300円(月換算359円) |
年額にすると今回比較した中では最も安い部類です。ここでもWeb決済のほうが安く、公式表記で16%OFFにあたります。
Growで追加されるのは、カテゴリ別予算設定、月次レポート、データの毎日更新、過去データの全期間閲覧、サブスク一覧、光熱費インサイト(ベータ版)、早期退職インサイトなどです。
向かない人:カテゴリごとに細かく予算を組んで家計を締めたい人。無料版は「見る」ことに寄っており、予算管理は有料側の機能です。
⑤ B/43は「ワンバンク」になった
比較記事でいまだに「B/43」と書かれていますが、現在の名称は「ワンバンク(ONE BANK)」で、b43.jp にアクセスすると onebank.jp に転送されます。 公式サイトは自らを「AI家計簿アプリ ワンバンク」と名乗っています。
サービスの本質は変わっていません。公式のFAQに「Visaプリペイドカードと家計簿アプリがひとつになったサービス」と説明されており、カードで払うと自動で家計簿ができる仕組みです。カードは用途別にペアカード(ふたりで1口座を共有)、マイカード(Apple Pay / Google Pay対応・あと払い)、ジュニアカード(子ども向け)の3種類があります。
有料の「ワンバンクプラス」は月額480円。公式ページで確認できた特典は次のとおりです。
- クレカ・銀行口座を上限なしで連携(ペアカード利用者はパートナーへ共有可)
- 証券口座連携(毎日自動更新・連携数無制限)
- AIレシート読み取りが月150枚まで
- AIスクショ読み取りが月150枚まで(Webサイトやアプリ画面の取り込み)
- ワンバンクプラス限定カードを1枚無料発行
- 1人が申し込めば、その人のカードに紐づくパートナーや子どもも一緒に使える
最後の1点は地味ですが効きます。夫婦それぞれが課金する必要がありません。
向かない人:既存の複数のクレジットカードの還元をそのまま使い続けたい人や、現金中心の人。ワンバンクカードを通した支出が最も正確に記録される設計だからです。
⑥ Dr.Wallet:AIではなく「人力」で精度を取る
異色の存在です。公式サイトは「オペレーターが入力代行!精度99.98%」と掲げており、撮影したレシートをオペレーターが目視・手入力してデータ化する方式を採っています。プライバシーに配慮した上で人が入力するため、手書きの領収書や潰れたレシートでも精度が落ちにくいのが売りです。運営は公式表記でBearTail X社。
トレードオフは即時性です。人が入力する以上、決済直後に家計簿へ反映されるわけではありません。買い物のたびにリアルタイムで残高を確認したい人には向きません。
なお、プレミアム会員の具体的な料金は公式サイトのトップページ上では確認できませんでした。金額はアプリ内またはストアの表示でご確認ください。
⑦ 料金以前に知っておくべき2つの落とし穴
落とし穴1:アプリを消しても解約にならない
最も多いトラブルがこれです。アプリをアンインストールしても、App Store / Google Playの定期購入は自動では止まりません。 使っていないアプリに毎月請求が続きます。解約はOSのサブスクリプション管理画面(Web決済ならサービス側の設定画面)から行う必要があります。
落とし穴2:口座間の振替が「二重の支出」になる
自動連携の宿命的な弱点です。銀行口座から電子マネーへ10,000円チャージすると、システムは「銀行からの出金」と「電子マネーでの決済」をそれぞれ支出として数えてしまうことがあります。放置すると支出が実態の2倍で表示されます。
これを防ぐには利用者自身が「振替」の設定を個別に行う必要があり、「連携すれば全部自動」という期待と実態がいちばんズレるのがこの部分です。銀行側の多要素認証が強化された結果、定期的な再連携・再認証を求められる頻度が上がっている点も併せて認識しておいてください。
⑧ タイプ別・どれを選ぶか
| こういう人 | 選ぶべき | 理由 |
|---|---|---|
| 証券・暗号資産まで総資産を一覧したい | マネーフォワード ME | 連携先の幅が最も広い |
| 無料のまま口座をたくさん繋ぎたい | Zaim | 無料でも連携数に上限がない |
| 広告なしで静かに残高だけ見たい | Moneytree | 無料版で広告非表示・50社まで |
| 夫婦・家族で生活費を共有したい | ワンバンク | 1人の課金でパートナー・子も利用可 |
| 手書き領収書やレシートが多い | Dr.Wallet | 人力入力で精度を確保 |
| クラウドに金融情報を預けたくない | 手入力型の家計簿 | 外部と通信しない設計 |
夫婦での共有についてはOsidOriという選択肢もありますが、公式サイト上で有料プランの料金表を見つけることができませんでした(「プラスPOINT」は買い物でポイントが貯まる別サービスで、こちらは無料と明記されています)。料金はアプリ内でご確認ください。
⑨ 個人事業主が注意すべき点
「家計簿アプリで確定申告まで済ませたい」と考えている場合、先に知っておくべき制約があります。
個人向けの家計簿アプリは個人の家計収支と純資産の把握のために設計されています。そのため、電子帳簿保存法が求める真実性の確保(訂正削除履歴の保持など)や検索性の確保、インボイス制度が求める登録番号の検証や税率別の区分記載を、個人向けアプリ単体で満たすことは想定されていません。
事業の経理は、家計簿アプリではなくクラウド会計ソフト側で行うのが前提です。家計簿アプリから明細をCSVで書き出し、マネーフォワード クラウド確定申告・freee会計・弥生などの会計ソフトへ取り込んで、法令対応はそちら側で担保する形になります。家計と事業の財布を最初から分けておくほど、この作業は軽くなります。
家計管理の「考え方」を先に固めたい人へ
ここまで見てきたとおり、アプリは記録を自動化する道具であって、家計の設計そのものはしてくれません。連携させただけで支出が減るわけではないので、先に管理の型を持っておくと、アプリ選びの答えも自然に決まります。以下は家計管理の基礎を扱った書籍です。
管理会計の考え方を家計に持ち込んだ定番。「どんぶり勘定は低収入より恐ろしい」という前提から、支出を把握する仕組みの作り方を扱います。ISBN 9784909957245。
共働き世帯の「どちらが何を払うか曖昧なまま貯まらない」問題に、4ステップで仕組みを作るアプローチ。ワンバンクのペアカードやOsidOriを検討している人と課題が重なります。ISBN 9784798167244。
アプリの細かい入力が続かなかった人向け。紙1枚に集約する方式で、6人の子を育てるFPが書いています。ISBN 9784534060716。
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まとめ
2026年7月時点で押さえるべき点を並べます。
- おかねのコンパスは2024年6月30日に終了済み。「無料・無制限・広告なし」を単体で維持するモデルは成立しなくなった
- マネーフォワード MEは2025年8月5日に値上げ。Web 540円/月・5,940円/年、アプリ 590円/月・6,490円/年
- Zaimは無料でも連携数無制限。有料は年4,378円(Web)で、Web申込なら422円安く無料お試しも30日
- Moneytreeは無料で広告なし・50社まで。Growは年3,900円(Web)と割安
- B/43はワンバンクに改称。プラスは月額480円で、1人の課金を家族で共有できる
- どのサービスも、アプリ内から課金すると高くなる
「AI」という言葉ではなく、自分の資産構成(投資中心か生活費中心か)、共有の必要性、払える月額の3点で選ぶのが確実です。
よくある質問
おかねのコンパスはもう使えないのですか?
使えません。東海東京証券の公式リリースによると、株式会社TTデジタル・プラットフォームが提供していた資産管理アプリ「おかねのコンパス for TT」は2024年6月中旬にアプリのダウンロードを終了し、2024年6月30日にサービス提供を終了しました。同時に保険管理アプリ「そなえるコンパス」も2024年4月30日に終了しています。2020年1月に開始したサービスでした。
家計簿アプリは無料のままで使えますか?
サービスによります。Zaimは無料会員でも連携口座数に上限がなく、Moneytreeは無料版でも広告非表示で50社まで登録できます。一方でマネーフォワード MEの無料会員は連携が最大4件までで、口座やカードが多い人には実用的とは言えません。無料で使い続けたい場合は、連携数の上限がどう設定されているかで選ぶことになります。
アプリから課金するとなぜ高いのですか?
App StoreとGoogle Playの決済手数料が価格に反映されているためです。マネーフォワード MEはWeb決済の年額5,940円に対しストア決済が6,490円、Zaimは年プランがWeb 4,378円に対しアプリ4,800円、MoneytreeのGrowはWeb決済の年額3,900円に対しアプリ決済4,300円と、いずれもWeb申込のほうが安く設定されています。Zaimは無料お試し期間もWebが30日、アプリが7日と差があります。
解約したのに請求が続くのはなぜですか?
アプリをアンインストールしただけでは定期購入は解除されないためです。iOSはApp Storeの「サブスクリプション」、AndroidはGoogle Playの「定期購入」、Web決済の場合は各サービスの設定画面から、それぞれ自動更新の停止手続きを行う必要があります。
家計簿アプリだけで確定申告まで対応できますか?
個人向けの家計簿アプリ単体では想定されていません。電子帳簿保存法やインボイス制度が求める要件は、マネーフォワード クラウド確定申告・freee会計・弥生といった事業者向けのクラウド会計ソフト側で対応する設計です。家計簿アプリから明細を書き出して会計ソフトへ取り込む運用になります。
出典
- マネーフォワード ME|【重要】プレミアムサービス スタンダードコースの料金改定に関するお知らせ(2025年8月5日 改定)
- くふう Zaim|プレミアム会員のご紹介
- マネーツリー|プランと料金
- ワンバンク|公式サイト
- ワンバンク|ワンバンクプラス
- Dr.Wallet|公式サイト
- 東海東京証券|「おかねのコンパス for TT」「そなえるコンパス」サービス終了のお知らせ
- OsidOri|公式サイト
※本記事の価格・仕様は2026年7月29日に各社の公式ページで確認した内容です。料金は改定される場合があるため、申し込み前に公式サイトで最新の情報をご確認ください。