SaaS(サース)とは、ソフトを買わずに、ネット越しに借りて使う形のことです。 「Software as a Service(サービスとしてのソフトウェア)」の頭文字で、GmailもZoomもfreeeも、全部これにあたります。

聞き慣れない言葉ですが、日本の企業の80.6%がすでにクラウドサービスを使っています(総務省調べ)。つまり、名前を知らないだけで、あなたはもう毎日どれかを触っています。

この記事では、図6枚で5分ぶんの説明をします。ややこしい話は最後まで出てきません。

SaaSの仕組みを説明した図。手元のブラウザからログインして使い、ソフト本体もデータも事業者のサーバーにある

※上図は当サイトが作成した図です。

📄 この記事の立場

この記事は、NISTの定義文書・総務省の調査・個人情報保護委員会のQ&A・中小企業庁の補助金要領といった公開資料を読んで、初めての人向けに言い換えたものです。特定のサービスを勧めるための記事ではありません。

ただ、この記事には広告(アフィリエイトリンク)が入っています。 SaaSの実例として、当サイトが以前に調べた「MiriCanvas」を記事の最後で紹介しており、そこに広告リンクがあります。運営者はこのサービスを購入しておらず、使用感は書きません。先に仕組みの話を全部して、実例は最後という順番にしてあります。

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30秒で言うと:買うのではなく、借りる

SaaSの定義は、アメリカの国立標準技術研究所(NIST)が2011年に出した文書が原典です。世界中がこの定義を引用しています。

利用者に提供されるのは、クラウド基盤の上で動く事業者のアプリケーションを使う能力である。アプリケーションは、Webブラウザのようなシンプルな画面やプログラム経由で、さまざまな機器から利用できる。利用者は、ネットワーク・サーバー・OS・ストレージといった基盤を管理も制御もしない。

NIST SP 800-145「The NIST Definition of Cloud Computing」(2011年9月)より、当サイトで要約

長いので、3つに割ります。

  1. ソフトは事業者のものである。 あなたのパソコンの中には入っていません
  2. ブラウザから使う。 だからWindowsでもMacでもスマホでも同じものが使えます
  3. 中身の面倒は見なくていい。 サーバーもOSも更新も、全部あちら側の仕事です

「所有」から「利用」への切り替え、と言われることがあります。買ったものは手元に残りますが、借りたものは返したら手元に残りません。 この一文がSaaSのいいところと注意点の両方を作っています。

あなたはもうSaaSを使っている

身近な例を並べると、一気に近づきます。

よく使うもの何のSaaSか
Gmail / Outlook on the webメール
Googleドキュメント / Microsoft 365文書作成
Slack / Chatwork / Microsoft Teamsチャット
Zoom / Google Meetオンライン会議
freee / マネーフォワード クラウド会計
Canva / MiriCanvasデザイン・資料作成
Dropbox / Google ドライブファイル保管

会社での広がり方も、数字で出ています。

日本企業のクラウドサービス利用率の推移と、用途別の内訳を示したグラフ。2014年38.7%から2024年80.6%へ

※上図は当サイトが総務省の公表データをもとに作成した図です。

総務省の令和7年版 情報通信白書によると、2024年時点で80.6%の企業がクラウドサービスを利用しています。2014年は38.7%だったので、10年で倍以上になりました。翌年の令和7年通信利用動向調査(2026年5月公表)でも「8割を上回っており、増加傾向が続いている」と報告されています。

用途の1位は「ファイル保管・データ共有」で71.0%。2位が「社内情報共有・ポータル」57.6%、3位が「電子メール」56.8%と続きます。特別なことではなく、日常業務の土台になっているのが分かります。

買い切りソフトと、何が違うのか

昔のソフトは、家電量販店で箱に入ったものを買っていました。それと比べると違いがはっきりします。

買い切りソフトとSaaSを7項目で比較した表

※上図は当サイトが作成した図です。

買い切りソフトSaaS
お金の払い方最初に1回毎月または毎年、ずっと
最初に出るお金大きい小さい(無料から始まることも)
ソフトの置き場所自分のパソコンの中事業者のサーバー
新しい版が出たら買い直すことがある自動で入れ替わる
台数を増やすときその数だけ買う人数ぶん増やす/減らす
使うのをやめたら古い版はそのまま使えるその日から開けなくなる
作ったデータ手元のファイルとして残る先に書き出しておく必要がある

7つのうち、最初に効くのは最初に出るお金です。数万円の買い切りソフトが、月1,000円のSaaSになると、始めるときのハードルがほぼ消えます。無料プランから入れるものも多く、買う前に中身を触れるというのは、箱入りソフトの時代には無かった利点です

最後に効くのは使うのをやめたときです。買い切りソフトは、お金を払うのをやめても古い版がそのまま動きます。SaaSは違います。契約が切れた日から、そのソフトは開かなくなります。

この非対称が、SaaSの話で一番大事なところです。あとの「契約前に確かめる3つのこと」で戻ってきます。

SaaS・PaaS・IaaS は「どこまで任せるか」の違い

SaaSを調べると必ず出てくる3兄弟です。違いは1つだけで、事業者にどこまで任せるかです。

オンプレミス・IaaS・PaaS・SaaSで、利用者と事業者のどちらが管理するかを8層で比較した図

※上図は当サイトがNIST SP 800-145の定義をもとに作成した図です。

  • 自社で持つ(オンプレミス) — サーバーを買って社内に置き、全部自分で面倒を見る形
  • IaaS — サーバーと回線だけ借りる。OSより上は自分で入れる
  • PaaS — プログラムを動かす土台まで借りる。アプリは自分で作る
  • SaaS — 完成したソフトを借りる。設定をいじる以外、何も管理しない

料理でたとえるなら、オンプレは畑から育てる、IaaSは食材を買う、PaaSはキットを買う、SaaSは店で食べる、という並びになります。SaaSだけは、作る側の都合をまったく知らなくても使えます。 これが普及した最大の理由です。

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そのサービスはSaaS? 3つの問い

目の前のサービスがSaaSかどうかは、3つ聞けば分かります。

SaaSかどうかを見分ける3つの問いのフローチャート

※上図は当サイトが作成した図です。

  1. ブラウザかアプリからログインして使う? — 手元にインストールして完結するなら、それはただのソフトです
  2. ソフトの本体とデータは事業者側にある? — 更新も保守もバックアップも、あちらの仕事です
  3. お金は使っている間ずっと払う? — 無料プランでも、使い続けるかぎり関係が続くなら「はい」です

3つとも「はい」なら、それはSaaSです。

境界にあるものを、この3問に通してみます。

サービス判定理由
GoogleドキュメントSaaS3問すべて「はい」。無料でも3問目は「はい」
Netflix微妙定義には当てはまるが、業界では「動画配信」と呼ぶ。SaaSは仕事の道具を指すことが多い
買い切りのWord(Office 2021)SaaSではない手元にインストールして完結する。Microsoft 365ならSaaS
スマホのゲームアプリSaaSではないソフトは端末の中にある。通信はデータのやり取りのため
社内サーバーの勤怠システムSaaSではないオンプレミス。管理しているのは自社

「SaaS」という言葉は、定義よりも狭く使われているというのが実態です。NISTの定義に当てはまるものすべてをSaaSと呼ぶ人は、あまりいません。迷ったら「仕事に使うソフトを、月払いでネット越しに借りているか」で判断すれば、会話はほぼ通じます。

いいところは、この4つに集まる

  1. 最初のお金が小さい。 数十万円のソフトを買う決裁が、月数千円の話になります
  2. 勝手に新しくなる。 不具合の修正もセキュリティ対応も、事業者がやります
  3. どこからでも開ける。 会社のパソコンでも、自宅でも、スマホでも同じものが出ます
  4. 人数を増やしたり減らしたりできる。 繁忙期だけ5人増やして、あとで戻せます

とくに4つ目は、買い切りでは真似できません。買ったライセンスは、要らなくなっても返金されないからです。

契約前に確かめる、3つのこと

ここからが本題です。便利さの説明はどこにでもありますが、やめるときの話はあまり書かれていません。

① 値上げは、向こうの都合で決まる

あなたが持っているのは「使う権利」であって、ソフトそのものではありません。だから価格を決めるのは事業者側です。多くの利用規約には、料金を変更できる旨と、事前に通知する旨が書かれています。

買い切りソフトなら、値上げされても手元の版は動き続けます。SaaSは、値上げを受け入れるか、やめるかの二択です。長く使うつもりのものほど、規約の「料金の変更」の項を先に読んでください。

② 解約したあと、データは戻ってこないことがある

一番の落とし穴です。3つに分かれます。

  • すぐ見られなくなる — 契約が切れた日から画面が開かない
  • 書き出せるが、期限がある — 解約後30日で消える、など
  • 返金はされない — 途中でやめても、払った分は戻らない

3つ目は実例があります。当サイトで調べたSocialDogは、規約・特定商取引法に基づく表示・ヘルプの3か所に「返金しない」と書かれていました。珍しい話ではなく、年払いのSaaSではむしろ普通です。

対策は1つだけです。契約する前に、データの書き出し方を調べておく。 これだけで、やめるときの損がほとんど消えます。

③ サービスそのものが終わることがある

事業者がやめれば、それで終わりです。無料のものほど起きやすくなります。

当サイトがAI議事録ツールを比較したとき、定番だった無料ツール「CLOVA Note」が2025年7月31日に終了していました。後継サービスへのデータ移行は用意されていましたが、用意されない場合もあります。

買い切りソフトなら、会社がなくなっても手元の版は動きます。SaaSは動きません。ここが、所有と利用のいちばん大きな差です。

契約前に開くのは、この4ページ

料金ページ・利用規約・特定商取引法に基づく表記・ヘルプの4つで、それぞれ何を見るかを示した図

※上図は当サイトが作成した図です。

開くページそこで見るもの
料金ページ月額か年額か/無料プランの上限/人数ぶんの課金か
利用規約値上げの予告はいつか/終了するときの予告/データを消すまでの猶予
特定商取引法に基づく表記途中解約で返金はあるか/解約はいつ効くか/運営会社はどこか
ヘルプ(書き出し)データを持ち出せるか/どの形式で出せるか/解約後も出せるか

料金ページだけ見て決めないでください。判断を分ける条件は、だいたい残り3つに書いてあります。 とくに「特定商取引法に基づく表記」は、日本国内で有料サービスを売る事業者に表示が義務づけられているページで、返金の有無がここに書かれます。

3年ぶんの総額で考える練習は、スマートリングのサブスクを3年で計算した記事にまとめてあります。月額を36倍するだけで、見え方が変わります。

会社で使うなら、あと3つだけ

個人で使うぶんには前章までで足ります。仕事で導入する立場なら、日本には知っておくと得をする制度が3つあります。

個人情報を預けても「第三者提供」にならない条件がある

お客様の名前や連絡先をSaaSに入れるとき、「これは本人の同意が要るのでは」と心配になります。個人情報保護委員会のQ&A(Q7-53)は、判断の分かれ目をこう示しています。

クラウドサーバに保存している電子データに個人データが含まれるかどうかではなく、クラウドサービス提供事業者がその個人データを取り扱うこととなっているのかどうかによって判断されます。

個人情報保護委員会「個人情報保護法についてのガイドライン Q&A」Q7-53(当サイトで要約)

契約で「事業者は個人データを取り扱わない」と定め、アクセス制御が適切なら、同意も委託先監督も要らない、という整理です。これは通称「クラウド例外」と呼ばれます。 該当するかは契約内容で決まるので、導入時に確認してください。

国が審査したSaaSのリストが公開されている

政府が調達するクラウドサービスを評価する ISMAP(イスマップ) という制度があり、登録されたサービスの一覧が公開されています。2026年9月15日時点でISMAPクラウドサービスリストには103件が掲載されていました。

政府調達のための制度なので、民間が使う必要はありません。それでも「どれを選べばいいか分からない」ときの手がかりにはなります。

クラウドの利用料は補助の対象になる

中小企業なら、デジタル化・AI導入補助金2026(旧・IT導入補助金)が使えることがあります。公式サイトによると、補助対象経費に「クラウド利用料(最大2年分)」が含まれています(デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠)。

補助率は1/2以内または2/3以内、補助額は導入するプロセス数によって5万円以上450万円以下です。登録された事業者が扱うITツールが対象なので、使いたいSaaSが対象かどうかは事前に確認が要ります。

実例:MiriCanvasで、SaaSを1つ触ってみる

ここまでが仕組みの話です。最後に、SaaSとはどういう手触りのものかを確かめられる例を1つ挙げます。当サイトが以前に調べたMiriCanvas(ミリキャンバス)という、ブラウザで資料やデザインを作るサービスです。

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なぜこれを例に選んだか — SaaSの3つの問いに、全部「はい」で答えられるからです。

  1. ブラウザを開いてログインするだけで使えます。インストールは要りません
  2. テンプレートも素材も作ったデータも、事業者のサーバーにあります
  3. 有料プランは月払い、または年払いです

そして無料プランがあるので、お金を払う前にSaaSの仕組みそのものを体験できます。 公式の料金ページによると、無料プランは永久無料で、5万種以上のテンプレート、35万点以上の写真とグラフィック、1GBの個人ストレージが使えます。有料のProプランは月払い980円、年払いなら月あたり790円(いずれも税込・1メンバーあたり)です。

何に使えるか

資料作成まわりで、次のような使い方ができます。

  • プレゼン資料のたたき台を作る — テーマを入力するとAIが構成とデザインを出します。一番時間のかかる「白紙から組み立てる」工程が短くなります
  • 社内掲示物・チラシ・SNS投稿画像を作る — テンプレートを選んで文字を差し替えるだけで形になります
  • 作った資料をPPTXで持ち出す — PowerPoint形式で書き出せるので、仕上げは使い慣れたソフトでできます

「SaaSはやめると開けなくなる」という話を、そのまま確かめられる例でもあります。 作ったものをPPTXやPDFで手元に書き出しておけば、サービスを使わなくなっても資料は残ります。この記事の「契約前に確かめる3つのこと」でお伝えした対策を、実際にやってみる練習になります。

登録でつまずくのは「メール認証」

無料プランの登録は5分ほどで終わりますが、1か所だけ止まりやすい場所があります。メールアドレスとパスワードを入れた時点では、まだ登録は完了していません。 公式ヘルプにも書かれているとおり、送られてきたメールの認証リンクを開いて初めて登録が確定します(二次認証)。

「登録したはずなのにログインできない」というつまずきは、ほぼこれです。迷惑メールフォルダも確認してください。

機能の詳細、Canvaとの比較、無料プランでどこまでできるかは、MiriCanvasの解説記事にまとめています。

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よくある質問

SaaSは何と読みますか?

「サース」と読みます。「サーズ」と読む人もいます。Software as a Service の頭文字で、日本語では「サービスとしてのソフトウェア」と訳されます。

SaaSとクラウドは同じものですか?

違います。クラウドのほうが広い言葉で、その中の1つの形がSaaSです。クラウドにはSaaS・PaaS・IaaSの3つの提供形態があり、SaaSは「完成したソフトを借りる」いちばん手軽な形です。

SaaSとサブスクは同じですか?

重なりますが、同じではありません。サブスクは「継続して料金を払う売り方」を指す言葉で、動画配信も雑誌の定期購読もサブスクです。SaaSは「ネット越しにソフトを借りる仕組み」を指します。多くのSaaSがサブスクで売られているため、混ざって使われています。

無料で使えるSaaSは、なぜ無料なのですか?

有料プランへの入り口として無料枠を用意しているものが大半です。容量・人数・機能のどれかに上限があり、そこを超えると課金される作りになっています。無料でも事業者のサーバーにデータが置かれる点は有料と同じなので、扱う情報の中身には気をつけてください。

解約したら、作ったデータはどうなりますか?

サービスによって違います。すぐ見られなくなるもの、一定期間だけ書き出せるもの、期限なく書き出せるものがあります。契約前にヘルプで「エクスポート」「データの書き出し」を検索して、方法と期限を確認しておいてください。

オフラインでは使えませんか?

基本的には使えません。ネットにつながっていることが前提の仕組みだからです。一部のサービスは、あとで同期する前提でオフライン編集に対応していますが、例外と考えてください。

会社で使うとき、セキュリティは大丈夫ですか?

「事業者のサーバーに置くから危ない」とは言い切れません。自社でサーバーを管理するより専門的に守られていることも多いためです。判断材料の1つとして、政府が評価したISMAPのクラウドサービスリストが公開されています。あわせて、契約で個人データの取扱いをどう定めるかも確認してください。

出典

画像はいずれも当サイトが作成した図です。各社が提供する素材ではありません。